性同一性障害

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性同一性障害 (せいどういつせいしょうがい; Gender Identity Disorder) とは、精神疾患の一つであり、精神的には身体的性とは反対の性に属するとした方が自然であるような状態の事である。

概要[編集]

身体的には男性女性のいずれかに正常に属し、身体的・精神的にも正常であるにも関わらず、自分の身体的な性別を受容できず、更に身体的性別とは反対の性であることを、もしくは自分の身体の性と社会的に一致すると見做されている(特に服飾を中心とした)性的文化を受容できず、更にはそれと反対の性的文化に属することを、自然と考える人がいる(トランスジェンダー)。彼らの状態を一種の精神疾患ととらえた場合の呼称として、性同一性障害と呼ぶことがある。

しばしば簡潔に「心の性と身体の性が食い違った状態」と記述される。ただし、「心の性」という表現はジェンダーパターン性役割性指向の概念を暗黙に含んでしまいがちであるため、同性愛と混同するなどの誤解を生じやすい。より正確には「性自認と身体の性が食い違った状態」と呼ぶべきである。

性自認とは[編集]

人間は、自分の性が何であるかを認識している。男性なら男性、女性なら女性として多くの場合は確信している。その確信のことを性自認と呼ぶ。通常は身体の性と完全に一致しているが、半陰陽 (intersexual) のケースなどを研究する中で、この確信は身体的な性別や遺伝子的な性別とは別個に考えるべきであると言うことが判明してきた。

そしてまた、ジェンダーパターン、性役割・性指向のいずれからも独立していることが観察される。

詳細は性自認の記事を参照。

性同一性障害[編集]

性自認の概念をもって改めて人類を観察してみると、半陰陽とは異なり生物学的概念としての男女のいずれかの身体形状に(少なくとも脳の構造を除いて*)正常に属す身体をもっているにも関わらず、性自認がそれと食い違っているとしか考えられない症例が発見され、その状態は性同一性障害と名付けられた。

  • * 性同一性障害者の脳の形状や微細な構造等が、非=性同一性障害者(いわゆる健常者)のそれと異なるか否か、また仮にその差異が存在するとしてその差異が先天的か生得的か、については現在のところ論争中である。 ただし、死者の脳の解剖から、両者間での脳内の特定部位の形状の差異が報告された例は複数存在する。

後天的要因が元となり、例えば性的虐待の結果として自己の性を否認する例は存在する。また、専ら職業的・社会的利得を得るため・逆に不利益を逃れるために反対の性に近づくケースもある。

しかしながら、このようなケースは性同一性障害とは呼ばない。一般には、性同一性障害者は何か性に関する辛い出来事から自己の性を否認しているわけではなく、妄想症状の一形態としてそのような主張をしているわけでもなく、利得を求めての詐称でもなく、(代表的な症例では出生時から)自己の性別に違和感を抱き続けているのである。

なお現在、性的虐待と性自認の揺らぎの相関に否定的な考え方も出てきている。というのは、「性に関する何かの辛いできごと」があっても、実際には性自認が揺らいでいる人は決して多くはなく、性同一性障害当事者の多くは「性に関する何かの辛いできごと」がまったくなかったと認識していることが圧倒的に多いからだ。現在、「性別違和を持った当事者が、何らかの性的虐待を受けた」という考え方に変更されてきている。フェミニズムカウンセリングの場では、この考え方が支持されている。

また、ガイドラインができた当初、「職業的・社会的利得」と考えたのは、日本でいうところのニューハーフオナベではなく、他者による強制的な性転換であった。比較的貧困で、売春以外観光の呼び物が極端に少ない地域で、そういったことは発生してきた。売春は、男性型の身体より、女性型の身体の方が単価が高く、需要もあることから、若年の間に去勢をし、十代後半になると性転換手術を受けさせ、売春をさせるという行為が多く見られ、それを防ぐための文言だった。

「職業的・社会的利得」という文言がいわゆるニューハーフオナベという職業に就く人々を性同一性障害診療の場から排除するかのように解釈されるのを防ぐため、ガイドラインの第2版では「なお、このことは特定の職業を排除する意図をもつものではない」と明記された。

ガイドラインにおいて「反対の性」と明記されているように性同一性障害においても性自認は男性と女性を基本とされている。しかし実際の診療の場では、性自認が中性や無性、それ以外の者も存在する。ただし、現在の社会で中性として生きることは絶えず他者の「男性か?女性か?」という目にさらされることになるため、男性もしくは女性としての性役割を演じることとなる。また、無性としての肉体や性役割は想定が難しく、対応が難しいのが実情である。

用語[編集]

性同一性障害に関連する重要な用語を挙げる

MtF
Male to Femaleの略。身体的には男性であるが性自認が女性であるケースをMtF-GIDと呼ぶ。
FtM
Female to Maleの略。身体的には女性であるが性自認が男性であるケースをFtM-GIDと呼ぶ。
性別適合手術(性別再判定手術)
Sex Reassignment Surgery(SRS)、または、Gender Reassignment Surgery(GRS)の訳語であり、性別再割当手術とも訳される。性自認に合わせて、外科的手法により外性器などの形態を変更することを意味する。一般的には性転換手術(sex-change operation)と言われているが、下等動物にみられるように、反対性の生殖能力を持つことはできないので、日本精神神経学会の正式訳語としては「性別適合手術」を用いるようになっている。
性転換症
Transsexualismの訳語。 性同一性障害のうち、特に身体的性別に対する違和感・嫌悪感が強く性別適合手術までを望む症例を指す。
リアルライフ・エクスペリエンス (RLE)
実際に望む性別として社会的に生活してみること。24時間継続的に行う場合をフルタイムRLEと言い、何らかの事情でそれができない場合に生活時間の一部をRLEにあてる場合をパートタイムRLEと言う。過去にはリアルライフ・テストと呼ばれた。

特徴と類似概念[編集]

性同一性障害者も一般の男女と同じく、「自分の心理的性別に相応しい服装を好み」(非・異性装)、「自分の心理的性別と反対の性を恋愛対象とする」(異性愛)ケースが多い。そのため、身体的性別を基準にして観察すると「異性装を好み」「同性を恋愛対象とする」ように見える。

しかしながら、性同一性障害者の中にも一般の男女と同じく異性装者同性愛者が存在するので、必ずしも上記の限りではない。

混同されがちであるが、性同一性障害と同性愛や異性装とは、それ自体は全く独立した別個の現象である。

ジェンダー[編集]

性同一性障害者のジェンダーのあり方は様々である。

  • 一般に身体的性別に応じて躾られるので、その性に応じたジェンダーを身につける部分もある。
  • 一般の男女と同じく生活の中で見聞きする男女のジェンダーパターンを、意識的・無意識的に学習する部分もあるが、その場合、自分の性自認に応じたものを取り入れる部分もある。
  • 先天的に定まっている性自認はそれだけでは不安定であり、それを維持するには性自認に合った身体的・社会的経験が必要となる。性同一性障害者の場合その機会は限られているので、過剰に社会的・文化的な性差に拘り、性自認に応じた行動様式を取ろうとする場合もある。
  • 逆に、社会適応を容易にするために性自認とそれに伴う性の意識を押さえ込み、過剰に身体の性に適合した行動様式を取ろうとする場合もある。

これらの間の、無数のパターンがあり得る。

定義[編集]

日本国内における性同一性障害への医療的アプローチの基準である、日本精神神経学会の「診断と治療のガイドライン」によれば、性同一性障害の診断は次のように行なわれる。

  1. 生活歴の聴取
  2. 性別違和感の実態を調査する。アメリカ精神医学会「精神障害の診断と統計の手引き」第4版(DSM IV)や 「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」第10版(ICD10)を参考としながら、以下のことを聴取する。
    • 自らの性別に対する継続的な違和感・不快感
    • 反対の性に対する強く持続的な一体感
    • 反対の性役割
  3. 身体的性別の判定
    • 外性器の診察・検査
    • 内性器の診察・検査
    • 染色体検査
    • ホルモン・内分泌系検査
  4. 除外診断
    • 統合失調症などの精神障害によって、本来の性自認を否認したり、性別適合手術を求めたりするものではないこと。
    • 文化的社会的理由による性役割の忌避や、もっぱら職業的利得を得るために反対の性別を求めるものではないこと。
  5. 診断の確定
    • 以上の点を総合して、身体的性別と性自認が一致しないことが明らかであれば、これを性同一性障害と診断する。
    • 半陰陽、間性、性染色体異常などが認められるケースであっても、身体的性別と性自認が一致していない場合、これらを広く性同一性障害の一部として認める。
    • 性同一性障害に十分な理解をもつ精神科医が診断にあたることが望ましい。2人の精神科医が一致して性同一性障害と診断することで診断は確定する。2人の精神科医の意見が一致しない場合は、さらに経験豊富な精神科医の診察結果を受けて改めて検討する。

なお、性別違和感に要求される「継続性」については、ICD10の性同一性障害の項に書かれている「2年間以上」という基準が参考にされることが多い。

原因[編集]

性同一性障害の原因は現在のところは不明である。 性同一性障害以外の一般の男女に於いて性自認がどのように決定されるのかすら、定説は存在しない。

乳児期の極めて早い時期(可能性としては出生以前)に由来することや、の分界条床核の大きさが性自認に一致することなどから、

  • 脳の中には性自認の原型を決定する神経核があり、通常はこれが身体的性別に合わせて正しく形成される。
  • 胎児期の性ホルモン異常などにより形成がうまくいかないと性同一性障害になる

という説が有力と考えられている。詳細は性自認#性自認の決定要因を参照。

症状[編集]

性同一性障害によって引き起こされがちな症状を挙げる。 なお、全ての性同一性障害者に全ての症状が現れるとは限らない。

ジェンダー・アイデンティティ・クライシス (gender identity crisis)
人間のアイデンティティの維持において性自認は重要な役割を果たしている。例えば、「自己を定義するような短文を、被験者に短時間で(焦らせながら)できるだけたくさん書かせる」という実験を行うと、多くの被験者は自己の性別に関する認識を記す。
通常、生まれ持った(と思われる)性自認の原型は、自己の身体的特徴を把握することや、社会に於いて性役割を学習し、承認されることで強化され、安定した性自認を形作る。
しかし、性同一性障害者の場合は逆に、性自認の原型とは矛盾する身体的経験をすることになり、矛盾した性役割を与えられることが多いので、しばしばこれらの経験によって人格の同一性を脅かされるように感じる。
性別違和感
性自認と反する身体的性別を持っていることに違和感を抱き、不快に感じる。極端なケースでは、ペニスの切断を試みるMtFや、乳房を引き千切ろうとするFtMも存在する。性別違和感の存在には、前述の通り身体的性別が人格の同一性を脅かすことにも関係しているのかもしれない。(fixme)
反対の性役割・ジェンダーパターン
前述の通り、性同一性障害者は様々なジェンダーを持ち、典型的には多くの点で身体的性別とは反対の性(性自認と一致)の性質を持っている。
その他
性別違和感や、偏見から社会で正当に扱われないという経験は多くの当事者にとって耐え難いものであるので、様々な精神症状を伴うことも多い。抑うつ摂食障害アルコール依存症、不眠などが見られる。産経新聞(2003年4月12日)によれば、調査対象の29.2%に不登校経験が、74.5%が自殺を考えたことがあり、自殺未遂や自傷行為に及んだ者は31.1%であり、MtFに比べFtMの方が不登校、自殺未遂・自傷行為経験率が高かった。また、軽度の自閉症(自閉症スペクトラムの症状)などの関連性があることも謳われている。

一次性および二次性[編集]

性同一性障害を大まかに一次性・二次性の2つの亜群に分類することがある。中核群・周辺群という分類をする医師もいるが、これもほぼ同様のものであると考えられている

ただし一部の医師は、中核群・周辺群を、自性器嫌悪が激しく性別適合手術を強く望むグループと、自認する性の服装・文化的生活・第二次性徴の除去(MtFでは鬚の除去や声の高音化、FtMでは乳房除去や声の低音化等)・自己の自認する性の第二次性徴の発露程度(MtFでは女性化乳房、MtFでは鬚や筋肉質の身体形状)までで満足するグループとの分別に、この対概念を用いている。

一次性(プライマリ)の場合、小児期または青年期前期に発症し、青年期後期または成人期に受診する。身体的性別と反対の性自認を確固たるものとして持っていることが多い。

二次性(セカンダリ)の場合、発症はやや遅く、壮年期や、老年期に近くなることもある。当初は症状が異性装として現れることが多いとも言われる。性自認が確固としたものでなく揺れていることもある。

FtMは比較的均質であると言われ、一次性に属するケースが多い。MtFでは症状がより多様であり、二次性も多く見られる。

これらの分類は症例を検討する際にはある程度有用であるとみなされ、多くの論文で言及されている。一次性と二次性は症状が似ているだけで本質的に異なる疾患なのではないかと考える者もいるが、一方では、症状が表面化した時期が異なるだけで本質的には同じであると考える者もいる。

性同一性障害当事者の中には、このような分類を適切でないと考える者もいる。過去に、医療者が治療の対象を一次性の中の極めて典型的な症例のみに限定しようとしたことがあるという事情や、それを背景として一次性の当事者の一部が二次性の当事者に対して差別的であったというようなことが影響している。

医療的対処法[編集]

精神科領域の治療[編集]

精神療法としては、当事者のQOL(生活の質)の向上を目的として次のようなことを行なう。

  • 非寛容によりもたらされがちな自己評価の低さを改善させる。
  • 性自認やそれに基づく自己同一性を再確認させ、「自分は何者であるか」を明確にさせる。
  • 社会生活上に生じうる様々な困難を想定し、その対処法を検討させる。
  • リアルライフ・エクスペリエンスを通じて、それに伴う困難も体験させた上で対処法を検討する。
  • 抑うつなどの精神症状を伴っている場合には、その治療を優先して行なう。
  • 最終的に、今後どのような治療を希望するかを冷静に決定させる。

これらの作業は性同一性障害かどうかの診断と重なる部分もあるので、平行して行われることも多い。

性自認を身体に一致させる方向の精神療法が正しく、また低コストであると考える人もいる。しかし、幾つかの理由から現在の精神療法は性自認の変更を目的としていない。

  • 過去の治療例から、性自認の変更は成人に対しては極めて困難だと判明している。多くの場合は不可能と考えられている。
  • 性同一性障害者自身は性自認の変更を望まないことが多いので、治療の継続が困難である。
  • 性自認が人格のあり方を基礎づけていることを考慮すれば、変更が可能であったとしてもそれは人格の入れ替えのようなものになる可能性がある。この点で倫理的に許されないという意見もある。

身体的治療[編集]

ホルモン療法[編集]

身体的性別とは反対の性ホルモンを投与することで、二次性徴の一部を性自認に一致させようとするものである。MtFに対してはエストロゲンなどを、FtMに対してはアンドロゲンなどを用いる。特に、体型が性自認に一致した性に近づくことが多いため、その性に合わせた社会生活を容易にするとともに心理的な葛藤を改善する効果が認められている。 ホルモン投薬の効果は血液を採取して性ホルモンの血中濃度を定期的に監視することによって評価される。ホルモン療法における血液検査は治療目的の検査であっても今のところ健康保険が適用されない。肝機能障害などの一般的な血液検査に比較して費用が桁違いに高額であることから健康保険の適用を望む意見が多くある。

投与形態としては注射剤、添付薬、経口剤があるが、日本においては注射剤が一般的である。注射剤が最も副作用が少ないが、長期にわたる注射のために、注射部位(多くは三角筋あるいは大臀筋)の筋肉の萎縮を引き起こすことがある。全ての事例に於いて頻繁にみられる副作用は肝機能障害であり、そのリスクは経口剤が一番高い。詳細は事例ごとに異なるが、注射剤を用いる場合、1週間から3週間毎の通院が必要で、費用は1月あたり2,000円から10,000円程度である。

解剖学的男性にエストロゲンを投与した場合、次のような作用がある。

解剖学的女性にアンドロゲンを投与した場合、次のような作用がある。

  • 皮膚の乾燥、色素沈着
  • 皮下脂肪中心から内臓脂肪中心に。
  • 筋肉の発達
  • 髭や体毛の増加
  • 頭髪の減少。禿げることもある。
  • 変声し、声が低くなる
  • 排卵停止。卵巣の機能低下。
  • 子宮内膜の萎縮。これにより月経停止。
  • 動脈の硬化
  • にきびの増加
  • 陰核の肥大
  • 性欲の昂進。攻撃性の増大。
  • 貧血の改善
  • の広さの拡大。
  • 目つきが鋭くなる。

これらの作用は性同一性障害者に生じた場合には性別違和感を改善し、葛藤を少なくする効果がある。しかし、それ以外の者に対して反対の性の性ホルモンを投与し上記の作用を生じた場合、自己同一性を脅かし性同一性障害に似た深刻な問題を引き起こすこともあるので注意が必要である。

また上記の内、髭・乳房・排卵への影響は復元に困難が伴い、変声・精巣への影響は数ヶ月以上投与を続けるとほぼ不可逆である。

そのため、ホルモン療法の選択に当たっては性同一性障害にあたることを十分に確認した上で、本人に慎重に判断させる必要がある。「診断と治療のガイドライン」では、ホルモン療法を第2段階の治療としている。第1段階(精神療法)を一定期間受けた後に希望する者に対してのみホルモン療法を行なう。

医学的対処を求めて受診する性同一性障害者の中には、早急なホルモン療法の適用を望む者も多い。しかし、このような事情から現在、ガイドラインに沿った治療においてはこれは認められていない。

乳房切除[編集]

FtMの場合、アンドロゲンを投与しても乳房の縮小はほとんど起こらないので乳房切除術が必要となる場合がある。

乳房が小さい場合には乳輪の周囲を切開して乳腺など内部組織を掻き出し、余剰皮膚を切り取る方式をとる。これは瘢痕が目立たない。

乳房が大きい場合や(乳房を不快に思って圧迫するなどにより)下垂している場合には、乳房の下溝に沿って皮膚を切開する方式を用いる。乳頭は一度遊離させて適切な位置に移植する必要がある。瘢痕が目立つことも多い。

2003年3月の埼玉医科大学総合医療センターのデータでは、入院期間は平均3.8日、費用は個室代を含めて平均55万4千円であった。岡山大学ジェンダークリニックのデータでは、費用は局部麻酔を使用した場合22万ないし23万円、全身麻酔の場合で40万円弱であった。

性別適合手術[編集]

MtFの場合、精巣の摘出、外陰部形成、膣形成、陰核形成を行なう。 FtMの場合、卵巣・子宮の摘出、膣粘膜切除・膣閉鎖、尿道延長・陰茎形成を行なう。 詳細は性別適合手術を参照。

医療以外の対処法[編集]

性同一性障害者は何もしなければその身体的性別に応じて、自己の性自認とは異なる性として扱われることになる。これは多くの場合強く恒常的なストレスをもたらすが、性別違和感などの症状が軽い場合、あるいは性別変更を行う肉体的条件が整わない場合には、何らかの方法でストレスを解消することによりそのまま生活できることもある。

  • 性自認に適合した性へと移行することが、社会的・経済的問題によって困難だと考え、この方法を選択しようとする者も多い。
  • ジェンダー・アイデンティティ・クライシスによる人格への深刻な被害を避けるための手段が必要である。このため、適当な場で性自認に適合した服装や行動をとることにより、自己の性自認を確認しようとする者もいる。趣味的な異性装者とされる人々の中には、この方法を選択した性同一性障害者が少数含まれていると見られる。

発現率[編集]

MtF-GIDは3万人に1人、FtM-GIDは5万人に1人と言われているが、もっと多いという説も存在する。日本国内には2200人~7000人程度が存在すると見積もられている。

MtFがFtMよりも多いことやFtMに一次性のケースが目立つことの理由に関して、様々な説がある。

  • ジェンダー規範由来説
    • 一般に現在の欧米や日本の文化では、男性が女性的であることに比べて女性が男性的であることには寛容である。
    • そのため、性同一性障害が比較的軽症であって性別違和感がそれほど強くない場合、FtMでは問題が顕在化しないのではないか。軽症のFtMではそれは「個性である」と認識されて本人も周囲も意識せず、問題が表面化しないため、FtMは少数のより症状の極端な例だけが観察されているのではないか。
    • これに対してMtFでは軽度で幾らか女性的な面が表出するだけでも周囲との軋轢を生じるためにより多くの例で問題が表面化するのではないか。

尚、他にも以下のような俗説があるが、医学上の見地から誤りであるとされている。

  • イヴ原則由来説
    • 人間の男性は、胎児期に女性を作り替えることで発生する。男性への作り替えの引き金が引かれなければ、人間は自然に女性として生まれる。
    • そのため、「男性への作り替えに障害が起きて不完全になってしまうケース」は多いが、「男性化の引き金となるべき遺伝子が存在しないのに、誤って一部分だけ作り替えが行われてしまうケース」は少ないのではないか。
→人間の場合、受精卵にSRY遺伝子(Y染色体に含まれる)の働きかけがあれば男性として、なければ女性として生まれる。女性が男性に作り変えられるということはない。詳細は「性染色体」および「Y染色体#性決定」を参照。

歴史[編集]

判例[編集]

性同一性障害に伴うトラブルなどを理由にして行われた懲戒解雇が解雇権の濫用にあたるとされた裁判例がある。それが 2002年性同一性障害者解雇無効事件(懲戒処分禁止等仮処分申立事件、東京地方裁判所平成14年(ヨ)第21038号、東京地裁平成14年6月20日決定 労働判例830号13頁掲載)である。この事件は、男性として雇用された被用者(原告)が女性装での就労を禁止する服務命令に違反したことを理由の一つ(ほかにも4つの理由が挙げられている)として懲戒解雇されたことに対し、従業員としての地位保全および賃金・賞与の仮払請求の仮処分を申し立てたものである。東京地裁は、性同一性障害である被用者が女性の服装・化粧をすることや女性として扱って欲しいなどの申し出をすることは理由があることだとした。そして、使用者側(被告)は被用者(原告)からのこうした申し出を受けた後も善後策を講じなかったことや、女性の格好をしていては就労に著しい支障を来すということの証明がないことを指摘して懲戒解雇を権利の濫用であるとして無効とし、賃金の支払いを命じた。

他方、性同一性障害者が窃盗罪実刑判決を受けて受刑者となるにあたって、拘置所長による調髪処分(丸刈りの強制)をしないように求めた行政訴訟で、これを認めなかった裁判例がある。それが、2006年の行政処分差止請求事件(名古屋地方裁判所平成18年8月10日)である。この事件は、戸籍上は男性であるが女性として社会生活を営んでいた性同一性障害者が、受刑者となるにあたって、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法改正により監獄法から改称)37条に基づく男子受刑者としての調髪処分(平成17年法改正前の監獄法36条に基づく強制翦剃処分。現行法令上「原型刈り」、「前五分刈り」の2種(及び「中髪刈り」)から規定に沿って受刑者が選択する)が拘置所長によって行われないように求めて、仮差止め請求(行政事件訴訟法37条の5第2項)を行った。これに対して裁判所は、まず訴訟要件に関する被告)の本案前の抗弁を排斥した。しかし、実体判断によって原告の仮差止め請求を棄却した。

理由として、髪型の自由について、一般論としては「日本国憲法第13条の保障する個人の尊厳に係る権利の内容をなすものとして尊重されるべきもので、何人も合理的な理由なく一定の髪型を強制されることはない。」とした。しかし、「懲役刑等は受刑者に贖罪と更生を図ることを目的とし、身柄の刑事施設(刑務所)への収容と強制を図るものであり、拘禁目的達成に必要な限度で、自己決定権が制約を受けることは当然である」とした。そして、「丸刈りに調髪することは、犯罪性向を有する多数の者を集団生活させる際に、規律や衛生を厳格に維持するために有効かつ必要で、逃走防止、画一的処遇の必要性、調髪を許容することによる財政上の負担増加を理由に、合理的な制限にあたる」ことなどを上げ、原告の請求を退けた。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

金八先生、上戸彩がこれになっていた

外部リンク[編集]

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